【コラム】利用者・参加者の心理的な障壁をなくすには?

コラム

こんにちは。ノスタルジー鈴木です。突然ですが、今回はコラムと称して、雑文を綴りたいと思います。少々お付き合いいただければ幸いです。

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「知的・精神障がい、発達障がいなどの特性で、普段はコンサートに行きにくいと思われている方にも、楽しんでいただけるよう、色々と配慮したコンサートです」

これは、2019年に流山市で開催されたバリアフリーコンサートの告知の際に用いられた文言です。「誰でも鑑賞できます」とするのではなく、あえて障がいのある人に向けて強く訴求したのだということを、今年、市川市内で開催されたイヴェント※に参加した際に聴きました。「障がいのある人もない人も」の呼びかけでは、障がいのある人は「行きにくいし、行こうと思わない」という意見が大半だったそうです。

参加することに対する心理的な障壁を下げる、あるいは、なくすためには、試行錯誤を経て得た知見を生かし、工夫することが求められるということを実感しました。

※「今年、市川市内で開催されたイヴェント」とは、NPO法人いちかわ市民文化ネットワークによる事業、『ユニバーサル・アート」が花咲くまちづくり~輝く共生社会実現に向けて』の一環として、2021年7月31日に開催されたワークショップです。障がいのある人に向けたメッセージの事例は、「地域の市民芸術文化活動における、文化センターの役割についての提言」という講演の中で紹介されたものです。

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昨日、下記の記事を読み、フリースタイル市川が手掛ける「まちづくり」の様々な活動、中でも、フードバンク事業への、参加や利用を促す際の課題と、その解決へのヒントがあると思ったので、記事を紹介します。

「“モヤモヤ“を突破して「助け合うのは当たり前」の社会を作る グラミン、ベーシックインカム、起業家精神と制度のバランス」西村 真里子 2021.12.27

詳細はリンク先の記事本文をお読みいただくか、YouTube動画をご覧いただければと思います。ここでは、ディスカッションの参加者の発言を紹介します(鍵括弧内が引用箇所です)。なお、発言中の太字箇所は筆者による強調です。

▼日本IBM 大塚泰子氏
「仕組みだけを提供しても、社会の理解や利用者の心的安心を考えないとちゃんと必要な人に必要なものが行き届かないことにモヤモヤを感じています。原因の一つは、日本は世界一自己責任を要求する国というのもあるのではないでしょうか?
本当は余っているお弁当を欲しいのに他人の目が気になって、助けを求めることができない。自分が頑張って働かないのがいけないのだ、という自己責任がまさって、目の前の必要なことに手が伸ばせない状況が起きている。どうしたら必要としている人に適切にものを届けることができるのでしょうか?
※冒頭の「仕組み」は、「フードバンクの仕組み」のことです。

▼グラミン日本理事長/CEO 百野公裕氏
「廃棄の問題は企業からよく相談を受けます。直近の例でいうと化粧品会社は季節の変わり目に約2割の化粧品を廃棄してきているのですが、このまだ使えるのに廃棄対象となる化粧品をシングルマザーの方にクリスマスプレゼントとして『贈る』というプログラムを作っています。困っている人に対して『支援する』ではなく『贈る』という形で届けていくだけでも受け取る側の心理は変わります

▼日本IBM 藤森慶太氏
そもそも“フードロス”と“貧困”を紐づけるから支援を受ける側が恥ずかしくなるのではないのでしょうか?例えばカヤックさんの『まちのもったいないマーケット』ではターゲットを限定せずに余った食べ物を提供する仕組みを作っています。
ベーシックインカムにもつながりますが、まずは全員に配ることを行う。そうすると、フードロス/SDGsへの意識を持っている人と、本当に食べ物が必要な人がその場に集まってきます。ターゲットを貧困層に限定するのではなく、門戸広くとにかくみんなにあげる、という仕組みであれば、誰も恥ずかしい思いをすることなく食べ物を受け取ることができるようになるのではないか、と考えます」

▼IBMデザイナー山田龍平氏
「本業のデザインの視点でいうと差別的なデザインをしないというのが大事だと思っております。具体的な例でいうと「らくらくフォン」。高齢の方には便利なはずなのに使う側に心理的なハードルをもたせる名前でありユーザーインタフェイスです。高齢者だから、と差別感を感じさせないデザインにするというのが大事ですが、同じように今回の話のなかでも高齢者だから、シングルマザーだから、と区別するのではなく誰もが幸せに使えるデザインというのも大事だと考えます」

以上、4名の発言から特に重要だと思う箇所を引用しました。

「困っている人に対して『支援する』ではなく『贈る』という形で届けていくだけでも受け取る側の心理は変わ」る、という百野氏の発言や、「ターゲットを貧困層に限定するのではなく、門戸広くとにかくみんなに」という藤森氏の発言と「区別するのではなく誰もが幸せに使えるデザインというのも大事だ」という山田氏の発言は、2021年12月22日のTBSラジオ『アシタノカレッジ』にゲスト出演した湯浅誠氏の発言や、その内容を受けたパーソナリティの塚本ニキ氏の発言(二人の発言については、『【TBSラジオ】湯浅誠さんに質問しました』をご覧ください)にも通ずると思います。

上記の発言内容は、冒頭で紹介した障がいのある方の参加を促すための訴求方法とともに、フリースタイル市川が「まちづくり」の活動をしていく上で、大変示唆に富んでいると思います。

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フリスタでは、メンバー間でのディスカッションを活発に行っていますが、すぐに取り組む必要のある目の前の課題(例:次回の『いちカイギ』の内容決定、その次の『いちカイギ』のゲストを誰にするか、『フードパントリー』のスタッフの体制)について議論する機会が増えてきたことに伴って、フリスタにとって重要ではあるけれど、緊急性は高くない事項を話し合う機会が減ってしまうという課題がありました。

そこで、12月からは、先を見据えて自由に議論することを目的としたミーティングを行うことにしました。この記事で取り上げたようなことは、必ずしも今すぐに話し合う必要があるものではありませんが、たくさんの仲間と活動していくことを2年目の目標としているフリスタとしては、仲間を増やすために、あるいは、必要としている方に利用していただくためには、議論すべきだと思っています。

また、これを読んでいる方でも、ここで取り上げたような課題に対して、こんなアイディアがあるよ、私はこう思っている、など、ご意見がありましたら、お気軽にメッセージをお寄せください。

〈注釈〉
この記事の冒頭の写真は、こざと南公園(市川市南大野2丁目)を、こざと北公園との間の道路から、筆者が2021年12月27日に撮影したものです。

人工池であり、道路を挟んで巨大なマンション群があるとは言え、こざと公園には様々な生き物が住んでいます。
2021年1月に、筆者は初めてこざと北公園にてカワセミのオスを見ました。ジュエルな小鳥の姿にときめきを禁じえませんでした。
筆者はカワセミの写真を撮影することができませんでしたが、Web上にこざと公園で撮影したカワセミの写真を公開している方がいらっしゃるので、リンクを張っておきます。
https://torijijiisuga.blogspot.com/2019/03/blog-post_26.html