市川市には、すべての市民が安心して、そして自分らしく暮らせるまちを目指す、明確な指針があります。それが「市川市多様性を尊重する社会を推進するための指針」というものです。
市川市多様性を尊重する社会を推進するための指針
https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/gen05/file/0000457370.pdf
先日、この素晴らしい指針のことを紹介したいと思い、こんな記事を書きました。
この「市川市多様性を尊重する社会を推進するための指針」には、個人の尊厳が尊重され、性別、性自認、性的指向、国籍、民族、年齢、障がいの有無等、様々な社会的属性にかかわらず、互いの多様性を認め合い、すべての人が自分らしく暮らせる地域社会を築くと書かれており、多様な生き方を選択することができる地域社会をつくることが必要であると記されています。
その上で、
市川市では、市、市民及び事業者がこうした理念を共有し、三者が一体となって協力することで、多様性を尊重する社会の実現を推進します。
出所:「市川市多様性を尊重する社会を推進するための指針」https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/gen05/file/0000457370.pdf
と謳っています。いわば、宣言ですね。
この指針の内容を読み、各主体にどんなことが期待されるかを考えてみました。各主体と言うのは、
- 事業者
- NPO法人などの団体
- 市川市職員
- 市川市議会議員
のことです。順に見ていきましょう。といっても、あくまでも私が「この主体には、こういうことが期待されるのだろう」と考えたものです。この点には十分ご留意ください。
1.事業者(企業や個人事業主)に期待される役割
- 多様性を尊重する社会の基本理念を理解し、尊重すること。
- 事業活動において、多様性尊重のための措置を講じること(例:従業員の多様性配慮、柔軟な働き方、顧客への配慮)。
- 市川市の多様性社会推進施策への協力・参加に努めること。
2.NPO法人などの団体に期待される役割
- 多様性尊重の理念を理解し、周囲への理解促進に努めること。
- 市川市の多様性社会推進施策への協力・参加に努めること。
- 市民活動・事業活動を通じて、多様性社会推進に寄与すること。
NPO法人には、特に指針が掲げる
- 「多様な性に対する理解の促進」
- 「性的マイノリティであることに起因する日常生活の支障を取り除くための支援」
- 「外国人等への情報の多言語化等、外国人等が安心して安全に暮らせるための支援」
- 「外国人等との交流の促進」
- 「外国人等に対する偏見又は差別の解消」
といった基本的施策の具体化において、「専門性」や「つながり(ネットワーク)」を活かした重要な役割を果たすことが期待されている、そう思います。フリースタイル市川にも、このようなことに貢献するような活動をすることが期待されているものと感じています。
この小さな記事をインターネットの大海の隅っこに刻むことも、その一端をわずかであれ担うものであると信じています。
3.市川市職員(公務員)に期待される役割
- 基本理念に基づいた行政運営を行い、すべての市民が尊重されるサービスを提供すること。
- 指針の基本施策を担当部署・業務に応じて具体的に実行すること。
- 多様な市民向けに、多言語情報提供や配慮ある窓口対応などを行うこと。
- 市川市長による教育・啓発活動を支援し、市川市全体で理解促進に貢献すること。
4.市川市議会議員(政治家)に期待される役割
- 指針の目的・基本理念を深く理解し率先行動すること。
- 多様性社会推進施策の立案・推進に貢献すること(条例提案、予算審議等)。
- 市民・事業者との連携・協力を促進すること。
- 教育・啓発活動に積極的に参加し、自らも啓発に努めること。
- 社会的に弱い立場の人々の声を代弁し、人権尊重を政策に反映させること。
参考:市議会議員がすべきではないこと
- 多様性の理念の否定や軽視
- 指針の目的・基本理念に反する言動
(市民の多様性尊重意識を阻害し、共生社会の実現を遠ざけてしまう)
- 指針の目的・基本理念に反する言動
- 特定属性に対する偏見・差別の助長
- 外国人、性的マイノリティなどへの差別的発言や行為
(差別・ハラスメントの誘発、市の信用失墜、市民生活の不安増大、行政コスト増大につながってしまう)
- 外国人、性的マイノリティなどへの差別的発言や行為
- 公職者としての品位を損なう発言
- 侮辱的・攻撃的・非寛容な発言
(市川市議会や市川市全体への信頼失墜、市民の政治参加意欲低下、民主主義機能の阻害につながってしまう)
- 侮辱的・攻撃的・非寛容な発言
- 差別的制度・政策の提案・推進
- 特定属性への不当な不利益を与える政策は指針に反する
(法的リスクや社会分断、多様な人材流入の妨げになる)
- 特定属性への不当な不利益を与える政策は指針に反する
- 多様性社会推進施策の妨害・非協力的態度
- 指針に基づく施策実行を遅滞させ、期待される効果が得られない
(市長による啓発活動にも悪影響を及ぼす)
- 指針に基づく施策実行を遅滞させ、期待される効果が得られない
おわりに
市川市が掲げる指針を受け、市内の様々な主体に期待されている(であろう)ことを挙げてみました。なんだか、当たり前のことばかりを挙げているな、と思われた方、はい、そうです!その通りです!
当たり前のことなのですよね、期待されていることとして私が書きだしたものは、いずれも。しかし、今、全国のいくつかの自治体では、政治家が市民同士の分断をあおるような言説を繰り返し、ある属性の人を優遇し、それ以外の人を劣位に見るような発言が報道されています。
市川市でも今後、議員が「市川市多様性を尊重する社会を推進するための指針」に反する差別的な主張を行う可能性がないとは言い切れません。
もしそのような発言があった場合、同僚議員、特に同じ会派やグループに属する議員が率先して誤りを指摘し、訂正を促せるかどうかが、市議会全体の信頼を左右すると思います。議会内の沈黙(無視)や、曖昧な対応は、市民を二重に傷つけ、差別を黙認する空気を生みかねません。そのようなことには、なってほしくないですよね。
市民が安心して暮らせるまちを守るためには、市川市議会議員一人ひとりが(一見当たり前に感じられることから成る)基本理念を深く理解し、差別的な言動を許さない姿勢を明確に示すことが欠かせません。
同時に、(今回は取り上げませんでしたが)市民自身も、情報に目を向け、議会に声を届けることで、多様性と人権を守る社会の共同担い手となることが求められます。
参考記事:多様化する市川市民の顔ぶれ
市川市に住む外国人の人口が増えていること、出自が多様になっていることを取り上げた記事です。
執筆・公開情報
執筆日:2025年9月17日
公開日:2025年9月23日
執筆者:ノスタルジー鈴木(特定非営利活動法人フリースタイル市川)