市川市と何かと比較されることの多い、船橋市。
鉄道駅の、京成線の中山駅やJR総武線の下総中山駅、東京メトロ東西線の原木中山駅の「中山トリオ」は、所在地である船橋市の住民のみならず、市川市との市境の立地であるため、多くの市川市民に利用されています。
私も下総中山駅を日常的に利用しており、駅にある「いろり庵きらく」という駅そば店や、駅の近くにある書店「文教堂」、ラーメン店の「鶏そば朱雀」と「四代目松屋食堂」、インドカレー「ナンハウス」といったお店は、よく利用しています。いずれも立地は船橋市ですが、市川市民である私にとって馴染み深く大切な(それはつまりなくなったら悲しい)お店なのです。
また、船橋市にある高等学校(略して高校と一般的には呼ばれますね)に、1992年4月から1995年3月までの3年間、36か月間、通ったこともあり、船橋市は私にとって第2の故郷と言っても過言ではありません。あ、さすがにそれは過言、すなわち言い過ぎかもしれません。素直にI’mSorry。
いずれにせよ(とか、いずれにしても、という言い回しを私は好みません。が、使ってしまいました)、私にとっても、多くの市川市民にとっても、馴染みがあり、並々ならぬ興味があるかもしれない、それが、船橋市なのです。
今日は船橋市が(前身の老人大学から数えると)40年間も続けている「ふなばし市民大学校」のことを紹介します。
船橋市公式Webサイト
ふなばし市民大学校学部・学科の紹介
https://www.city.funabashi.lg.jp/shisetsu/bunka/0002/0004/0002/p057083.html
(余談)
ちなみに、以前、国立歴史民俗博物館、DIC川村記念美術館、長嶋茂雄氏、小出義雄氏、高橋尚子氏、BUMP OF CHICKENなどで知られる、千葉県佐倉市の4年生市民大学「佐倉市民カレッジ」について、コラムで取り上げたことがあります。こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
船橋市民が学ぶ・つながる・活かす場「ふなばし市民大学校」
さて、それでは、参りましょう。
まずは、「ふなばし市民大学校」を取材したMyFunaねっとさんの記事を紹介します。
かつて市内では老人大学、ボランティア大学、スポーツ健康大学、生涯学習コーディネーター養成講座が別々に実施されていたが、平成16年度から、それらを一つにまとめて開校したのが同大学。
「自分らしく学び続ける」をテーマに、「学ぶ場」、地域活動の担い手を「活かす場」、知識を共有した縁でつながり、活動を循環させる「つながる場」を提供し、近年ではボランティア活動を通して地域のまちづくりを学ぶ「まちづくり学部」、生きがいづくりや仲間づくりを行う60歳以上を対象とした「いきいき学部」を開講してきた。
「幅広い年齢層の方に受講していただきたいと長年考えていた。というのも、昔は定年退職後に地域デビューという考えが主流だった時代もあったが、今のご時世、それでは自分が大変。地域とつながりを持っておくことは、もっと早くていい。これまで18歳以上が参加できるコースは限られていたが、令和2年度から全コースにおいて18歳以上が参加できるようになりました」と話すのは、同校副主査の田久保里美さん。
出所:MyFunaねっと「『ふなばし市民大学校』令和2年度から全学科の対象年齢が18歳以上に引き下げ、講師陣には多方面から専門家を招いて」(2020年1月6日)https://myfuna.net/archives/townnews/200106-1、2023年9月8日閲覧(太字は筆者)
船橋市には、元々、様々な大学、講座が存在しており、それらを束ねて新たに開校したのですね。先程、「前身の老人大学」と書きましたが、前身のひとつである、と書くべきでしたね。素直にI’mSorry。
市民大学校を開校したのは、平成16年、つまり、2004年ですから、今から(ヌ・アント!)19年も前なのですね。早いですよね。
上で引用した文章のうち、私が太字で強調した箇所にあるように、運営の考えに、若いうちに地域デビューをしたい人のニーズに応えたいというものがあります。この取材はコロナ禍前に行われたものですが、コロナ禍を経て、自分が生活する地域で居場所を持ち、人と交流し、何か自分なりに地域で貢献、活躍できる場を持ちたいと思う人が増えたように思うので、「ふなばし市民大学校」の、年齢を問わず地域デビューできるようにしたい、という考えは、多くの船橋市民の地域デビューを後押ししてくれるものになるでしょうね。
上の引用記事と一部重複もありますが、改めて「ふなばし市民大学校」が受講者に何を提供しているかを紹介しましょう。
ふなばし市民大学校では、
出所:船橋市公式Webサイト「ふなばし市民大学校学部・学科の紹介」(更新日:2023年7月5日)https://www.city.funabashi.lg.jp/shisetsu/bunka/0002/0004/0002/p057083.html、2023年9月8日閲覧(色付き文字は筆者による強調)
「学ぶ場」:豊かな人生をおくるために自分らしく学ぶ場
「活かす場」:地域活動の担い手、支え手づくりの場
「つながる場」:知識を共有した縁でつながる学びと活動循環の場
を提供しています。
修了後も同窓生が互いに交流を深めながら続けている様々な活動は、船橋の大きなエネルギーです。
若者から高齢者まで様々な世代からの入学をお待ちしております。
大学校で学んでいる間に修得できるスキルや築ける人間関係は、カリキュラムを修了した後も生き続けることがあり、それが船橋市という地域の活力となる、ということが書かれています。
(余談2)
市川市で長年開講されている、まちづくりリーダーを養成するための「いちかわTMO講座」に近いですね。「いちかわTMO講座」を2017~2018年に、「アドバンス講座」を2018年に受講し、修了したことが、私の地域デビューのきっかけとなったことは間違いありません。
「ふなばし市民大学校」の「まちづくり学部」と「いきいき学部」
さて、「ふなばし市民大学校」の学部と学科にはどのようなものがあるかを見ていきましょう。
ふなばし市民大学校案内パンフレット(2023年9月8日時点)より画像を引用します(一部、枠線の部分を加工。文言は加工していません。冒頭の画像もパンフレットを加工したものです)。
(2023年9月8日時点、一部枠線を加工)
(2023年9月8日時点、一部枠線を加工)
「まちづくり学部」は、その名の通り、まちづくりを行いたい人、あるいは、行っている人が受講すると良さそうな内容ですね。地域で活動をするためには、地域のことを知ることは欠かせません。また、仕事や家事とは異なる活動(多くの場合はボランティア。果たしてそれが最善なのか、多少なりとも金銭を受け取るべきなのかは議論が必要かもしれませんね)である、地域活動を実際に行うにあたって、何かを企画する場合の企画の立て方や、その計画を実施するために必要な知識を身に着けることもできるようですね。
「いきいき学部」は、生涯を通じて元気にいきいきと暮らせるように、いわば、QOL(Quality of life、生活の質)を高めることにつながるような、スキルやノウハウを修得するものに見えます。と書くと、老後(という言葉は、「人生100年時代」にはそぐわないでしょうか)を元気に過ごしたい人向けの学部のように思われるかもしれませんが、「くらしの教養学科」は、万人向けの内容になっているのではないでしょうか。内容を確認したわけではありませんが、パンフレットに書かれた文からは、そのようなことを想像できます。
とてもよい取り組みですね。さすが、船橋市です!市川市も(勝ち負けにまつわる語を思わず使ってしまう癖をなくしたいと思いつつ、書いてしまいますが)負けてはいられません。
越境学習について(石山恒貴氏の講義を聴講して)
昨日(2023年9月7日)公開した、こちらの記事で、「パラレルキャリア」について少し書きました。
実は、私自身が(市川民ですが、上記のように船橋市には並々ならぬ興味関心を持っている者でもあります)、現在、「ふなばし市民大学校」の特別講座「パラレルキャリアコース」を受講しており、その第1回の講座を受講したばかりだったことが、上の記事にパラレルキャリアのことを書いたことに、大いに影響しているのです。
コースの初回に、石山恒貴先生(法政大学大学院政策創造研究科)が、「パラレルキャリアをはじめよう」と題する講義の中で「越境学習」について解説してくださったのですが、石山先生は「自分にとってのホームとアウェイの境界を越えるのが越境学習」と、独自の定義を示されました(下図参照)。
出所:ふなばし市民大学校特別講座「働き方はひとつじゃない パラレルキャリアコース」、石山恒貴氏による第1回「パラレルキャリアを始めよう」(2023年9月6日)配布資料を参考に筆者作成。
会社に勤務する人が、他社に出向する場合、その他社はアウェイであり、この人は越境学習をすることになります。最近、様々な企業が解禁、あるいは社員に推奨している副業についても同様です。ただ、石山先生は、越境学習をもう少し(というか、かなり)拡張した見方をしており、例えば、会社員や専業主婦や学生などが、普段自分が準拠する状況(ホーム)から一時的に逸脱(飛び出)して、「ふなばし市民大学校」の講座を受講することも、「越境学習」だというわけです。
アウェイで学んだこと、身に着けた力を、ホームに持ち帰って、修得したものをホームで生かす、というような、明快なストーリーを描けるわけですが、そう簡単にいくわけではなく(ホームで、アウェイから戻った越境学習者がうまく立ち振る舞えないことも少なくないようですね)、あるいは、当の越境学習者に、そのつもりがないかもしれません。でも、ホームには、越境学習者がアウェイで得た何か(異物!)が少なからずもたらされ、その異物が混入することで、ホームは多様性を増していくなど、変化していくように思われます。異物を持ち込む越境学習者を排除してしまうのだとすると、その保守的なホームは滅びてしまうかもしれませんね。変化を嫌いすぎて。
越境学習する、つまり、自分にとって居心地のよくないアウェイの地に出かけて行って、そこで冒険する(石山先生の言葉を借りれば、漫画『ワンピース』やゲーム『ドラゴンクエスト』のような、ワクワクするような経験を(自分とは異なる特徴を持った仲間と)する)、そのような経験を多くしている人は、いわば、居場所を、あるいは依存先を多く持っているとも言えそうです。アウェイへの所属が仮に一時的であったとしても、人間関係は後々まで続くかもしれませんしね。
著作を多く出されている石山先生が、表紙のデザインを決めるまでの(珍)騒動を披露して下さったこちらの本を読んでみようと思っています。
(おまけ)自立と依存について
石山先生から「越境学習」のことを(わずか90分程度ではありますが)学びながら、あ、これって、
自立とは、何かに依存しないことではなく、依存先を複数持つことである
――という、熊谷晋一郎氏(東京大学 先端科学技術研究センター)の主張にとても似ているな、と思いました。詳しくはこちらの素晴らしい動画(TEDxTalks「熊谷晋一郎|依存の価値を再考する」、2023年3月23日)をご覧ください。
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関連記事(いちかわTMO講座について)
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執筆日 2023年9月8日
公開日 2023年9月8日