【コラム】「都市緑化」や「歩きやすい都市」について考える(アシタノイチカワVol.2の残響の中で)

コラム

「アシタノイチカワVol.2」に参加しました(2025.05.18)

2025年5月18日に、市川市のカーボンニュートラル推進課の主催による「アシタノイチカワVol.2」というイヴェントが、南行徳市民談話室で開催されました。

本稿の筆者であるノスタルジー鈴木は、このイヴェントに参加し、冒頭で短い話をした後は、会場の後方で基調講演に耳を傾けたり、ノートブック(パソコンではなく紙の束の方です)にひたすらメモランダムを取ることに専念しました。

なお、アシタノイチカワVol.2の開催レポートは、いちかわCNネットワークのウェブサイトで公開されています。フリースタイル市川の代表理事でもある稲村さんが筆を振るった記事です。
https://ichikawa-cnn.jp/ashitanoicihkawa_250518/

「文明国は都市に木を植える」(建築家・竹内昌義氏)

基調講演は、「みかんぐみ」の活動も有名な建築家の竹内昌義氏による、「健康・省エネ住宅のススメ」と題されたものでした。竹内氏によれば、住宅のガラス窓や壁などを断熱性に優れたものにすることで、エアコンの使用を控えても快適に生活できるとのこと。これは省エネにつながりますね。さらに、建築の屋上(屋根)や壁面に太陽光発電パネルを設置することで、電気を生み出せるという話も。これは、そうエネですね。

そんな竹内氏の話の中で、パリのまちづくりの話題が取り上げられました。昨年の五輪の後、パリでは街路樹を増やしているということでした。あわせて都市中心部への自動車の進入台数を減らすために自動車用の車線を減らして歩行者や自転車に割り当てたりもしているそうです。

この時、竹内氏は、「文明国では都市に木を植えています」と話していました。

市川市で木が切られた話 その1(国府台球場)

市川市では、ここ最近、樹木が伐採されたという報道がありました。2023年、市川市は、国府台球場(建て直し工事を終え、現在は国府台スタジアムなる新名称がついています)の周辺の400本もの樹木を――基本的に保全すると言ってきたにもかかわらず――伐採してしまいました。

市川市で木が切られた話 その2(市川市文化会館に向かう通りの街路樹)

また、昨年、2024年には、こんな報道もありました。

 千葉県・市川市文化会館北側のケヤキ並木の樹木16本が伐採され、田中甲市長は18日の記者会見で「市民に申し訳ない気持ち」と述べた。この場所の景観は10年前、市制施行80年を記念して市民から募集した「いちかわ景観100選」で、「文化会館とプロムナード」として選ばれていた。
 市によると、JR本八幡駅南側にあったケヤキは約40年前、県道の歩道延長約130メートルに植樹され、高さは7、8メートル。

出所:東京新聞「いちかわ景観100選 ケヤキ並木16本伐採 市川市長『市民に申し訳ない』」(公開:2024年7月22日、閲覧:2025年5月1日)https://www.tokyo-np.co.jp/article/341637

道路を掘り返す土木工事を行うため、ケヤキの伐採はしかたなかったそうなのですが、事前の告知もなく、市民に親しまれてきた街路樹が、突然伐採されたのです。こういうことがあると、市民は不信感を抱くでしょうね、市に。いくらインフラ整備の必要があるとはいえ、です。このような事態を前に、喜怒哀楽でいえば、怒りと哀しみの感情を抱いた人も少なくはなかったと思います。

竹内昌義氏は「文明国では都市に木を植えています」と言っていました。歩いて楽しい町にしようと、「ウォーカブル・シティ」などという言葉が使われ、その実現のための施策が講じられることもあります。が、歩道や歩行者空間に心地よい木陰をつくり、都市景観に彩りを与える街路樹を、伐採して減らしてしまうのは、仮に物理的には歩きやすい都市に仕上がっていったとしても、歩きたいとは感じられなくなってしまうとの懸念もあります。

市川市のような首都近郊の都市では、ウォーカブルであるとはどういうことかを、都市緑化、グリーンインフラなど、色々な観点と切り離さずに、セットで考えていく必要もあるのだなと、竹内氏の話に引き込まれながら感じたのでした。

——というわけで、竹内氏の「文明国では都市に木を植えています」という声が頭の中でこだましている状態で、色々と調べたこと(都市緑化や歩きやすい都市について)を、以下に載せておきたいと思います。

● 韓国・漢江(ハンガン)における緑化政策の概要

○背景と政策の転換

かつて漢江の河岸はコンクリートで覆われていましたが、2000年代以降、ソウル市は「ハンガンルネサンス」などのプロジェクトを通じて、自然性の回復と都市生態系の再生に注力してきました。2024年現在、漢江の護岸の約90%が自然型に復元され、樹木の数は2007年比で4倍以上、生息する生物種も約30%増加しています[1]。

○主な取り組み

  • 生態公園の再整備と拡大
    18年以上経過した漢江生態公園を「保全のための利用、利用のための保全」という方針で再整備し、2025年までに完了予定です。これにより生態系の健康性を高め、市民の利用と自然保全の両立を図っています[2]。
  • 自然型護岸造成
    コンクリート護岸を解体し、土・砂利・石などの自然素材に置き換える「自然型護岸造成事業」を推進。これにより川の自浄作用や生態系の回復が進みました[1][2]。
  • 「漢江の森」造成
    漢江の護岸や河川敷に大規模な樹木植栽を行い、PM2.5の低減や気候変動対策にも寄与。2025年までに「漢江の森」には約371万本の木が植えられる計画です[2]。
  • 自然型水遊び場の整備
    老朽化したプールを自然型の水遊び場に改修し、家族連れが自然と触れ合える空間を拡充しています[2]。

○成果と意義

  • 生物多様性の向上
    樹木や植生が増加し、生息する生物種も大幅に増えました[1]。
  • 都市環境の改善
    PM2.5の低減、気温上昇の抑制、水質浄化など、都市環境の質が向上しています[2]。
  • 市民の憩いと学びの場
    公園や水辺空間が整備され、市民が自然と触れ合い、環境保全意識を高める場となっています[1][2]。

まとめ
韓国・漢江の緑化政策は、コンクリート護岸の自然復元、大規模な植樹、生態公園の再整備などを通じて、都市と自然の共生、生物多様性の拡大、都市環境の質的向上を実現しています[1][2]。


● 歩きやすいニューヨーク市にはベンチがたくさん

ニューヨークの歩道にあるベンチは、休憩場所であることはもちろん、都市の歩きやすさ、商業価値、人と人のつながりを支える大切な要素として機能しています[3]。

○街中にあふれる「座れる場所」
ニューヨーク市には公的にベンチが設置されており、セントラル・パークだけでも約9,000脚あります。2009年にはタイムズスクエアやヘラルドスクエアが歩行者用のプラザとして整備され、誰でも利用しやすい屋外空間が広がりました。

○ウォーカブルシティ=休める力
ニューヨークでは歩道が市面積の約25%を占める公共空間です。途中で自由に休憩できる場所があることで、都市の「歩きやすさ(ウォーカビリティ)」が高まります。

○店舗側からの“勝手な”公共空間提供
コーヒーショップなどが店頭に置く椅子は、たいてい余っていたり古くなったりしたものを転用したものです。リーマンショック後の時期には、人を呼び込み、街に活気を取り戻すための「賑わい演出」の手段として使われました。

○サードプレイスとしての効果
歩道のベンチは、人と人をつなぐ「第三の場所(サードプレイス)」として機能します。特にコーヒーショップの前では、偶然の会話やつながりが自然と生まれます。

○ジェーン・ジェイコブスの都市論とのつながり
小さな区画や用途混在、古い建物の活用、適度な密度といった条件がそろうことで、都市は人の行き交いや偶然の出会いに満ちた場所になります。歩道にあるベンチは、その象徴とも言える存在です。

○“見る・見られる”という都市文化
外で座る人々は、街を行き交う人たちを観察し、また観察される存在になります。都市の歩道は、“見る・見られる”という「ソーシャルなバレエ」が繰り広げられる舞台であり、公共的な交流の場として重要な役割を果たしています。

● ミラノの「垂直の森」とについて「300万本の植樹計画」

○ ミラノの「垂直の森(ボスコ・ヴェルティカーレ)」

「垂直の森(ボスコ・ヴェルティカーレ)」は、ミラノ中心部の再開発地区ポルタ・ヌオーヴァに2014年に完成した、世界的にも有名な高層集合住宅です。著名建築家ステファノ・ボエリが設計し、2棟のタワー(約112mと80m)が特徴です[101][102][103]。

この建物の最大の特徴は、建物の外壁やバルコニーに約800本の樹木、5,000本の低木、15,000株以上の多年草など多様な植物が植えられている点です[101][103]。これにより、都市の中に「垂直方向の森」を出現させ、都市の生物多様性の向上や空気の浄化、ヒートアイランド現象の緩和に貢献しています[101][102]。

植物による「グリーンカーテン」効果で、室内の湿度や温度を調整し、二酸化炭素やPM10などの大気汚染物質を吸収。住民にとっても快適な住環境を提供し、世界的な建築賞も多数受賞しています[101][102][103]。

○ ミラノの「300万本の木を植える計画」について

ミラノ市は「Forestami(フォレスタミ)」という都市緑化プロジェクトを推進しており、2030年までにミラノ都市圏で300万本の樹木を植えるという目標を掲げています[104][105][106]。この本数はミラノ都市圏の人口にほぼ匹敵し、「市民一人に一本の木」を象徴しています[105]。

この計画による主な効果は以下の通りです。

  • 都市部の緑被率を現在の約7%から17〜20%に拡大[106]
  • 年間で500万トンの二酸化炭素吸収(市民の排出量の約80%に相当)[104][106]
  • 10年間でPM10(微小粒子状物質)を3,000トン削減[104][106]
  • 都市の気温を最大2℃低下させる効果[104][106]

また、使われていない貨物鉄道敷地を7つの新しい公園に転換したり、屋上緑化や学校の校庭への植樹など、多角的なアプローチで都市の緑化を進めています[104]。

建築家ボエリは「植樹は気候変動対策として最も効果的かつ民主的な方法」と述べており、ミラノの都市政策の中心的な取り組みとなっています[104][105]。


まとめ

  • ミラノの「垂直の森」は都市型高層住宅に大規模な植栽を施した世界的な環境建築の象徴。
  • ミラノの「300万本の木を植える計画」は、都市の気候・大気環境改善、生物多様性向上、住民の生活の質向上を目指す大規模な都市緑化プロジェクトです。

● ミリオン・ツリーズNYC計画と公園緑地面積の拡大について

○ミリオン・ツリーズNYC計画

ミリオン・ツリーズNYC(MillionTreesNYC)は、ニューヨーク市が2007年に開始した大規模な植樹プロジェクトです。この計画は、市内の5つの行政区(マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランド)全域で100万本の木を植えることを目標とし、公園局(NYC Parks)と民間非営利団体ニューヨーク・レストレーション・プロジェクト(NYRP)による官民連携で進められました[201][202][203]。

当初は2017年までに目標達成を予定していましたが、市民ボランティアや地域団体の協力もあり、計画は前倒しで進み、2015年までに100万本の植樹を達成しました[201][202][203]。植樹は街路樹、公園、私有地や学校敷地など多様な場所で行われ、都市の森林面積は約20%拡大しました[202]。

主な効果には、以下のものがあります[201]。

  • 環境効果:二酸化炭素の吸収による気候変動の抑制、雨水の吸収による洪水防止、大気浄化、ヒートアイランド現象の緩和、生態系の保全。
  • 経済効果:景観向上による土地価値の上昇、省エネやカーボンオフセット効果など、1ドルの投資で5.6ドルの経済効果。
  • 社会効果:住民の健康増進、地域コミュニティの活性化。

○ ニューヨーク市の公園緑地面積の拡大について

ニューヨーク市は、2007年の長期環境計画「PlaNYC」や、2014年以降の「OneNYC」などを通じて、公園や緑地の拡大・保全を都市政策の柱としています。2040年までの目標には、「オープンスペースの拡大」や「官民連携の強化」などが掲げられています[204]。

近年では、未利用地や空き地を新たな公園や遊び場、緑地に転換する取り組みも進行中です。2024年には「Vital Parks for All」イニシアチブが発表され、特に緑地が不足する地域で空き地を公園として整備する計画が進められています[5]。この施策では、複数の空き地をまとめて取得・公園化するための手続きの簡素化や、地域の健康・福祉向上を目的とした投資が進められています[205]。

まとめ

  • ミリオン・ツリーズNYCは、100万本の植樹による都市緑化と環境・社会・経済効果をもたらした先進的プロジェクト[201][202][203]。
  • ニューヨーク市は長期計画のもと、公園や緑地面積の拡大、空き地の公園化などを積極的に推進し、住民の健康と都市の持続可能性向上に取り組んでいます[204][205]。

● シンガポールの「シティ・イン・ア・ガーデン」と「緑化条例」について

○ シンガポールの「シティ・イン・ア・ガーデン」とは

シンガポールの「シティ・イン・ア・ガーデン(City in a Garden)」は、都市全体を巨大な庭園のようにするという国家的なビジョンに基づいた都市計画です。2001年に本格的に始動し、単なる「ガーデンシティ」からさらに進化したコンセプトとして、都市のあらゆる場所に緑を組み込むことを目指しています[301][302][303]。

このビジョンのもと、シンガポールは以下のような多様な施策を展開しています。

  • パークコネクタネットワーク(PCN):全長360km以上の緑道で主要な公園や住宅地を結び、市民のほぼ95%が徒歩10分以内で公園にアクセスできる環境を実現[302][303]。
  • ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ:2012年開園、101ヘクタールの敷地に1,500種以上の植物を集めた都市型巨大植物園で、シンガポールのランドマークとなっています[301][302]。
  • 垂直緑化・屋上緑化:2009年から「Skyrise Greenery Incentive Scheme」を導入し、ビルの壁面や屋上の緑化を推進。2023年時点で100ヘクタール以上の屋上・壁面緑化が実現[302]。
  • 住宅地の緑化:公営住宅(HDB)の屋上や共用部に「グリーンデッキ」や庭園を設置し、生活空間の緑化を拡大[302]。

このように、都市の成長と自然環境の共存を徹底して追求し、都市の至る所で緑が感じられる街並みを実現しています。

○ シンガポールの緑化条例の特徴

シンガポールの緑化政策は、厳格かつきめ細かな法規制と制度設計が特徴です[304][305]。

  • 法による厳格な保護規制:緑地や樹木の保護に関する法律が整備されており、開発時には敷地内の一定割合の緑化や既存樹木の保存が義務付けられています[304][305]。
  • 開発時の緑化義務:新規開発や再開発時には、敷地内の緑化面積や樹木・低木の本数など細かな基準が設けられ、設計段階から緑化計画の提出・審査が必要です[305]。
  • 樹木保存地区の指定:特に価値の高い樹木や緑地は「ヘリテージツリー」や「樹木保存地区」として指定され、伐採や移植には厳しい規制がかかります[305]。
  • ネットワーク型の緑化:単に点在する緑地を増やすだけでなく、公園や緑地をネットワーク化し、都市全体で面的に緑を広げる方針が徹底されています[303][304]。

さらに、緑化政策の推進には市民の意識向上も重視されており、キャンペーンや学校教育などを通じて国民の協力を得ている点も特徴です[304]。


まとめ
シンガポールの「シティ・イン・ア・ガーデン」は、都市全体を緑で包み込む包括的な都市戦略であり、厳格かつ詳細な緑化条例とネットワーク型の緑化推進、そして市民参加によって、世界有数の緑豊かな都市を実現しています。

● ロンドンの「ナショナル・パーク・シティ構想」とは

ロンドンの「ナショナル・パーク・シティ構想(National Park City)」は、都市全体を一つの大きな“公園”のように捉え、都市生活の中で自然と人間のつながりを深め、より緑豊かで健康的、そして野生味あふれる都市を目指すビジョンです。2019年7月、ロンドンは世界で初めて「ナショナル・パーク・シティ」を宣言しました[402][406][401]。

○主な特徴と目標

  • 都市全体の緑化推進
    ロンドン市長は、2050年までに都市の緑地率を50%に拡大し、樹冠率(木の枝や葉が覆う割合)を10%増やすという目標を掲げています[402]。
  • 自然・健康・ウェルビーイングの向上
    都市の公園や緑地、屋上緑化などを活用し、市民が身近に自然と触れ合える環境を整備。身体的・精神的健康や地域コミュニティの活性化を目指しています[403][406]。
  • 市民参加型のムーブメント
    ナショナル・パーク・シティは法的な都市計画権限を持つものではなく、市民や団体、行政が協働して進める社会運動です。フェスティバルやワークショップ、植樹活動などを通じて、市民の主体的な参加を促しています[406][404]。

○背景と意義

従来の「国立公園」は手つかずの大自然を保護するものでしたが、ナショナル・パーク・シティ構想は都市の中に自然を取り戻し、「都市に住む人々が自然を楽しみ、守り、活用する」新しい都市像を提案しています[402][403][401]。

ロンドンの取り組みは、世界中の都市に広がりつつあり、「都市の中の自然」を再評価し、持続可能な都市づくりのモデルとされています[401][407]。


まとめ
ロンドンのナショナル・パーク・シティ構想は、都市をより緑豊かで健康的、自然と共生する場とするための市民参加型のビジョンおよび運動であり、都市の未来像に新たな価値観を提示しています。

● メルボルンの「Urban Forest Strategy」とは

メルボルンの「Urban Forest Strategy(都市林戦略)」は、都市の気候変動への適応やヒートアイランド現象の緩和、生態系の多様性向上、住民の健康や快適性の向上を目的とした長期的な都市緑化政策です。2012年に策定され、2040年までを見据えたビジョンと具体的な目標を掲げています[502][503][504][505][508]。

○主な目標と特徴

  • 樹冠被覆率(Canopy Cover)の拡大
    メルボルン市内の公共空間における樹冠被覆率を、2012年時点の約22%から2040年までに40%へと倍増させることを目標としています[502][505][508]。
  • 都市林の多様性向上
    病害虫や気候変動に強い都市林を目指し、特定の樹種や属、科への依存を減らすため、「1樹種あたり5%以下、1属あたり10%以下、1科あたり20%以下」という多様性基準を設定しています[502][505]。
  • 樹木・植生の健康改善
    既存樹木の健康維持や、老齢・衰弱した樹木の計画的な更新を行い、健全な都市林を維持します[502][505]。
  • 水循環と土壌管理の強化
    都市の水循環に配慮し、雨水利用や土壌の保水性向上など、水に強い都市づくりを推進しています[502][504]。
  • 都市生態系の向上
    生物多様性の保全や都市生態系の健全化を図り、野生動植物の生息環境を守ります[503][504]。
  • 市民参加と協働
    戦略の策定・実施には市民や地域団体の意見を取り入れ、情報発信や教育活動も重視。例えば「E-mail-a-tree」キャンペーンなど、市民が都市林に親しみを持てる仕組みも導入されています[504]。

○具体的な取り組み

  • 年間約3,000本の樹木植栽
  • 各地区ごとの「プレシンクト・プラン(Precinct Plans)」策定
  • 都市林データの可視化と公開(Urban Forest Visual)
  • 予算規模は20年間で約3,000万豪ドル

○効果・意義

この戦略により、メルボルンは気候変動への適応力を高めるとともに、都市の景観や住民の生活環境の質を大きく向上させています。また、都市林政策の先進事例として国内外で注目され、他都市にも波及しています[504][505][508]。


まとめ
メルボルンのUrban Forest Strategyは、2040年までに都市の緑化と生態系の多様化を大幅に進め、持続可能で健康的な都市環境を実現するための包括的な長期戦略です。

補足:メルボルン市の「E-mail-a-tree」キャンペーン(通称「Treemail」)

メルボルン市の「E-mail-a-tree」キャンペーン(通称「Treemail」)は、都市林の保全と市民参加を目的に2013年から始まったユニークな取り組みです。市内の約7万本の街路樹や公園樹1本1本にID番号と専用のメールアドレスを割り当て、市民がその木に直接メールを送れるようにしました[602][603][604]。

当初の目的は、枯れ枝や病気など樹木の異常を市民が気付いた際に、迅速に市へ報告できる仕組みを作ることでした[603][604][606]。これにより、都市林の健康状態の把握や維持管理の効率化が期待されていました。

○ 市民の反応と効果

この制度は想定外の展開を見せます。市民や世界中の人々が、木への愛情や感謝、ユーモアあふれるメッセージ、人生相談など、報告以外の内容を多数送るようになりました[601][603][605][607]。例えば、「毎朝犬がおしっこをしてごめんなさい」「あなたは街で一番美しい木です」「試験があるけど君には関係ないね」など、木を擬人化した心温まるやりとりが日常的に交わされています[601][603][604][605]。

市の担当者が「木」になりきって返信することもあり、樹木と人との距離がぐっと縮まりました[604]。

○主な効果

  • 都市林への愛着や関心の向上
    木にメールを送ることで、市民が身近な自然を意識し、都市林への愛着や保全意識が高まりました[601][603][606]。
  • 都市林の健全化
    本来の目的である異常報告も機能し、老朽木や危険木の早期発見・対応に役立っています[603][604]。
  • 国際的な注目と広がり
    世界中からメールが届くなど、メルボルンの都市林政策の先進性が国際的にも話題となりました[605][607]。

まとめ
「E-mail-a-tree」キャンペーンは、市民が木と“対話”することで都市林への関心と愛着を育み、都市の自然環境保全やコミュニティ醸成に大きな効果をもたらした先進事例です。

「市川市には木が増えていて、歩いて楽しいまちづくりが行われています」と言える日がくるかもしれません

歩きやすく、歩いて楽しい都市。ウォーカブルで(歩ける)、シッタブル(座れる)、レスタブル(休める)――そんな、快適な都市空間には、緑も不可欠です。街路樹があり、いつでも休めるようにベンチが設置されている、幅の広い安全な歩道が整備されていたら良いですよね。

ちなみに、都市緑化の一部は、グリーンインフラとして機能することもあります。たとえば、木陰を作る街路樹は、都市緑化の代表例ですが、街路樹にヒートアイランド現象を抑える効果があれば、この街路樹はグリーンインフラとしての役割も果たすとも言えます。

「市川市みどりの基本計画」を知っていますか?

このあたりの事項については、20年以上前のものではありますが、「市川市みどりの基本計画」の資料を読むと書かれているかもしれません。

市川市みどりの基本計画(2004年3月)
https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000004385.pdf

なお、今年2025年時点に達成を目指している各指標の目標値は以下の通りです。果たして達成しているでしょうか?結果の公表が2026年にはなされるはずなので、注目しておきましょう。

1.緑地の確保目標
・市全域の緑地面積 = 1,842 ヘクタール
・市全域面積に対する緑地の割合 = 0.327

2.都市公園の整備目標
・都市公園面積 = 229.6 ヘクタール
・市民一人あたりの都市公園面積 = 4.73 平方メートル/人

3.都市公園等の整備目標
・都市公園等面積 = 490.6 ヘクタール
・市民一人あたりの都市公園等面積 = 10.11 平方メートル/人

情報出所:市川市公式ウェブサイト「市川市みどりの基本計画」(更新日:2022年1月13日、閲覧日:2025年6月20日)
https://www.city.ichikawa.lg.jp/gre01/1111000015.html
※資料には平成37年と書かれています。平成29年が令和1年で2019年だったので、平成37年は令和7年(今年です)、つまり、2025年です。

是非、「市川市みどりの基本計画」を読んでいただきたいと思いつつ、市川市が「緑の将来像を実現していくため」に定めている6つの基本方針を紹介しておきましょう。現在に至るまでの20年間に、市はこれらのことを実現しようと活動してきたのです。

1.生態系に配慮して地域の緑を守り活用します
地域の生態系や自然環境を特徴づける樹林地、屋敷林、社寺林、 クロマツ、巨木、農地、水辺の環境をその特性に合わせて守り、多様な動植物の生息・生育環境とするとともに、暮らしの中に憩いと潤いを提供する緑として守り活用します。

2.魅力ある都市公園を創出します
歩いていける距離に、緑に囲まれた魅力的な公園・広場を創出し、市民が健康で安全に暮らすことができる緑豊かな環境づくりを推進します。

3.公共施設の緑を増やします
市役所、公民館、学校等の公共施設は、 市内に配置された日常生活と密接に関わる施設であるため、地域の緑のシンボルとし、潤いと安らぎのある緑の景観を提供する等、他にさきがけた緑化を進めます。

4.民有地の緑を増やします
密集した市街地や工業地における建築物の屋上・壁面緑化、屋敷林や社寺林の保全等、日常生活の中に潤いと親しみをもたらし、安全で快適なまちを形成する緑を育みます。

5.水と緑のネットワークを形成します
地域の生態系に配慮し、生物の生息空間として連続した樹林地や湧水から都市河川、東京湾へと続く水系を保全し、多様な生物の生息の場とするとともに地域の水循環を健全に保ちます。
樹林地や公園緑地と豊かな街路樹のある道路や緑道、都市河川とを回廊で結び、レクリエーションや防災機能を持つ水と緑のネットワークを形成します。

6.緑のパートナーシップを推進します
市民や事業者 とのパートナーシップのもと、緑を守り、更に育てる運動を積極的に行い、保全、育成に有効なピーアールに努めるとともに市民の緑化活動への支援の充実を推進します。

そして、これらを実現するために市川市はどんなことをしていこうと、この計画の策定時に宣言していたかというと、以下の通りです。

実現化に向けた市の役割
・公共事業(公園や道路の整備等)による緑化を推進します。
・緑化や公園整備に関わる財源を積極的に確保していきます。
・市民や事業者が行う緑化活動を支援します。
・緑の保全や緑化を推進する制度をつくります。
・市民、事業者、市による協働体制づくりを推進するための条例を定めます。
・広報活動等を充実させ、多様な機会を通じて計画の普及を図ります。

情報出所:「市川市みどりの基本計画」(2004年3月)

市の役割に書かれていることを市川市はしっかりと実践してきているように感じます。その活動の成果として、上で確認した数値目標は達成されるでしょうか。また、市川市が人と緑とのかかわりを大切にしていると感じ、「潤いと安らぎあふれる緑豊かなまち」であると思う市民は多いでしょうか

筆者(ノスタルジー鈴木)が「アシタノイチカワVol.2」に参加した時に聴講した竹内昌義氏の話をきっかけに、都市緑化や歩きやすい町(あるいは街、まち)に(改めて)興味を持ち、生成AIの力を借りて、焦点の定まらない、文字数ばかり多い記事を生み出してしまいました。読みづらいかと思います。素直にI’mSorry。

このような話題もたまに当サイトで取り上げてみたいと思います。また夏がやってきますが、歩道の街路樹がつくる影があると、少し安心できますね。逆に、木陰がない歩道の照り返しは目にまぶしく、気持ちを大いに疲弊させるような気もします。

話が長くなりました。またお目にかかりましょう。フリースタイル市川のノスタルジー鈴木でした。

* * * * *

<画像出所>
冒頭のアイキャッチ画像で使用した写真の出所は以下の通りです。
・左の写真:ソウル市総合ニュース「ソウル市、ハンガン(漢江)の自然性回復に注力…ハンガン(漢江)、都市生態系の宝庫に生まれ変わる」(公開:2024年9月26日、閲覧:2025年6月20日)https://japanese.seoul.go.kr/%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E5%B8%82%E3%80%81%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%B3%E6%BC%A2%E6%B1%9F%E3%81%AE%E8%87%AA%E7%84%B6%E6%80%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E3%81%AB%E6%B3%A8%E5%8A%9B%E3%83%8F/
・右の写真:ACROSS(アクロス)「■都市のコード論:NYC編 vol.02; “Sittable City”」(公開日:2014年6月3日、閲覧日:2025年6月20日)https://www.web-across.com/todays/srnrj2000002doc0.html

<参考資料>

▼韓国・漢江(ハンガン)における緑化政策の概要
[1] https://japanese.seoul.go.kr/%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E5%B8%82%E3%80%81%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%B3%E6%BC%A2%E6%B1%9F%E3%81%AE%E8%87%AA%E7%84%B6%E6%80%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E3%81%AB%E6%B3%A8%E5%8A%9B%E3%83%8F/
[2] https://japanese.seoul.go.kr/%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%95%E3%83%B3%E5%91%89%E4%B8%96%E5%8B%B2%E5%B8%82%E9%95%B7%E3%80%81%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%B3%E6%BC%A2%E6%B1%9F%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%A4%8D%E6%A8%B9/

▼歩きやすいニューヨーク市にはベンチがたくさん
[3]https://www.web-across.com/todays/srnrj2000002doc0.html

▼ミラノの「垂直の森」とについて「300万本の植樹計画」
[101] https://forbesjapan.com/articles/detail/39604
[102] https://en.wikipedia.org/wiki/Bosco_Verticale
[103] https://ishirabe.com/bosco-verticale/
[104] https://newsphere.jp/direction/20181221-1/
[105] https://www.euronews.com/2022/10/23/a-tree-for-each-citizen-forestami-is-trying-to-plant-3-million-trees-in-milan
[106] https://citygreen.com/milans-plan-to-plant-three-million-new-trees-by-2030/

▼ミリオン・ツリーズNYC計画と公園緑地面積の拡大について
[201] https://www.nygreenfashion.com/html/learn/milliontreesnyc.html
[202] https://www.nyc.gov/office-of-the-mayor/news/862-15/mayor-de-blasio-celebrates-one-millionth-tree-former-mayor-michael-bloomberg-bette-midler-
[203] https://research.fs.usda.gov/treesearch/download/45580.pdf
[204] https://www.realpublicestate.jp/post/4338/
[205] https://www.6sqft.com/nyc-wants-to-turn-vacant-lots-into-public-parks-and-playgrounds/

▼シンガポールの「シティ・イン・ア・ガーデン」と「緑化条例」について
[301] https://www.asiax.biz/kira/49237/
[302] https://globalbusinessoutlook.com/energy/go-green-with-gbo-how-singapore-became-city-in-a-garden/
[303] https://knowledgehub.clc.gov.sg/publications-library/singapore-the-first-city-in-nature
[304] http://www.clair.org.sg/j/wp-content/uploads/2018/03/rep_232-1.pdf
[305] https://www.nparks.gov.sg/-/media/nparks-real-content/partner-us/developers-architects-and-engineers/gdp-handbook-2018-apr-3.pdf

▼ロンドンの「ナショナル・パーク・シティ構想」とは
[401] https://www.nationalparkcity.org/wp-content/uploads/news/National_Park_City_Journey_Book_JP_Version_1.1_August_24_2022.pdf
[402] https://www.realpublicestate.jp/post/london5/
[403] https://www.jlgc.org.uk/jp/wp-content/uploads/2022/01/park-in-London.pdf
[404] https://worldurbanparksjapan.jp/?activities=%E5%9B%BD%E9%9A%9B%EF%BD%BC%EF%BE%9D%EF%BE%8E%EF%BE%9F%EF%BD%BC%EF%BE%9E%EF%BD%B3%EF%BE%91%E3%80%8C%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E6%9A%AE%E3%82%89%E3%81%97%E3%82%92%E8%B1%8A%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%99-2
[406] https://www.sendenkaigi.com/marketing/media/hansokukaigi/017207/
[407] https://green-connection.tokyo/2022/09/07/%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%80%8C%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%8D%E6%97%A5/

▼メルボルンの「Urban Forest Strategy」とは
[501] https://www.melbourne.vic.gov.au/urban-forest-strategy
[502] https://mvga-prod-files.s3.ap-southeast-4.amazonaws.com/public/2024-07/urban-forest-strategy.pdf
[503] https://una.city/nbs/melbourne/urban-forest-strategy-ufs
[504] https://naturvation.eu/sites/default/files/melbourne_snapshot.pdf
[505] https://centreforpublicimpact.org/public-impact-fundamentals/responding-to-climate-change-melbournes-urban-forest-strategy/
[508] https://aiph.org/green-city-case-studies/melbourne-australia-urban-forestry/

▼補足:メルボルン市の「E-mail-a-tree」キャンペーン(通称「Treemail」)
[601] https://www.biophiliccities.org/melbourne-email-a-tree
[602] https://secretmelbourne.com/melbourne-trees-email/
[603] https://www.bbc.com/news/magazine-33560182
[604] https://www.treesformissoula.org/new-blog/2022/6/28/melbourne-australia-gave-email-addresses-to-70000-trees
[605] https://thehappybroadcast.com/news/melbourne-trees-have-email-addresses-too
[606] https://www.metamorphosis-project.eu/content/treemail-phenomenon-melbourne.html
[607] https://www.youtube.com/watch?v=r4BtdFgVGjc

なお、本稿は生成AI「perplexity」などを使用して情報収集したものをベースにしたものです。

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執筆日:2025年6月20日
公開日:2025年6月20日
更新日:2025年6月23日
執筆者:ノスタルジー鈴木