【コラム】田中甲市長、検査入院。

コラム

公開日 2023年3月23日

先日、市川市の田中甲市長が検査入院したと報じられ、ご本人もTwitterでそのことを報告していました。また、市川市の広報室からもメッセージが出されており、「広報いちかわ」のコラムにもご本人からの説明が書かれていました。

田中 甲市川市長は、検査入院のため 2 月定例会を 7 日(火)より欠席させてい
ただいておりましたが、13 日(月)開催された議会運営委員会において、松丸
副市長
より状況の説明と改めて議会欠席のお詫びをさせていただきました。

出所:市川市公式Webサイト、市川市広報室メッセージ(2023年3月14日)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/new01/file/0000422374.pdf、2023年3月22日閲覧、太字は筆者による強調

「広報いちかわ」の市長による連載コラム「市川にこうご期待」には、入院までの経緯や、入院時点での市長の考えが綴られていました。

 3月6日(月)の朝、軽いふらつきで貧血状態になった私は、大事を取って健康診断を行うため大学病院に向かわせてもらいました。
 病院では入院して細かく検査をすべきだとのドクターの判断が出されたのですが、翌日7日は2月の市議会定例会の中でも令和5年度の予算の採決が行われる重要な日です。そんなわけで検査入院することを躊躇していた私ですが、病院側から健康状態を優先してもらいたいとの言葉を受け、私自身も冷静に判断いたしました。
 病室に案内されると、なんとその部屋には市川市と縁の深い東山魁夷画伯の絵が飾られ、このような病室に案内されるのもまた、必然なのかもしれないと感じたのです。
 検査の結果については、時機を見て私自身から説明をする機会を作りたいと思っています。
 振り返れば4年間、捲土重来を期し日々の活動を続け、市長に就任してからは、更にスケジュールとルーティーンの中に身を置き、忙しすぎたのも事実でした

(中略)

 インターネット議会中継で病室から市長の席が空席になっている議場を見ながら、市議会議員の一般質問を聞くというようなことは想像もしていませんでした。重要な議会に欠席届を出すのは議員の皆様方に申し訳なく、また市民の皆様に対しても心からお詫びを申し上げる次第です。
 必ず健康を取り戻し、今まで以上に市長という重責を担っていかなければならないと眦(まなじり)を決する覚悟でおります。

出所:「広報いちかわ」2023年3月18日号、「市川にこうご期待」、https://www.city.ichikawa.lg.jp/pr/20230318/info20230318.html#column、2023年3月22日閲覧、赤文字、赤太字は筆者による強調

忙しすぎたのも事実――市川市のリーダー、市長ともなると、忙しいという本音を吐くことも憚られるのかもしれません。疲れた、休みたい、悩みがある、といったことを言えないということはないでしょうか。

市川市の市長は一人しかおらず、心身に負荷がかかるお仕事だと思います。とにかく、健康第一で、回復につとめていただきたいと思います。また、復帰されてからも(今まで以上に…との熱い想いは十分伝わりますが)、どうかご無理はなさらずに、副市長を始めとする周囲の方々と協力し合って、市政運営をしていただきたいと願っています。

そして、お休みせざるを得ない時のために、市長の信頼の厚い副市長がいるのですから、安心して副市長に任せていればよろしいと思うのです。

副市長、少し前は二名いましたが、現在は松丸多一氏のみなのでしょうか。

2022年7月1日に、大津政雄氏が副市長を退職した後、7月13日に副市長に就任したのが、松丸多一氏です。松丸多一氏が副市長に就任した直後の記事を紹介します。

 先月13日に副市長に就任。「誠心誠意、一生懸命に仕事に取り組む。市長の市政運営を補佐することが副市長の使命。市民の皆さまから信頼をいただける市政運営を目指す」

 1989年に入庁。法務を担当する部署や秘書課、企画部などの勤務を経て、危機管理室長や教育次長、議会事務局長を歴任した。「異なる分野の仕事が多く戸惑いはあったが、若い頃の苦労が大事なのだと思う。その経験が宝となって生きている。副市長でも生かしていきたい」と意気込む。

 生まれも育ちも市川で、「生粋の市川市民」という58歳。企画部時代に健康都市推進事業に携わったこともあり、健康への関心は高い。田中甲市長も「市川を健康寿命日本一にする」という公約を掲げている。「市民の皆さまが健康で歳を重ねられるような環境づくりをしていきたい」。

出所:市川よみうり&浦安よみうり online、「信頼される市政運営を目指す~市川市副市長 松丸 多一 さん」、 http://www.ichiyomi.co.jp/hito/hito2022.html#04、2023年3月22日閲覧、赤文字および赤太字は筆者による強調

副市長という役職は、どのような仕事をする人なのでしょうか。「地方自治法」の第167条を確認してみましょう。

第百六十七条 副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長を補佐し、普通地方公共団体の長の命を受け政策及び企画をつかさどり、その補助機関である職員の担任する事務を監督し、別に定めるところにより、普通地方公共団体の長の職務を代理する。
② 前項に定めるもののほか、副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長の権限に属する事務の一部について、第百五十三条第一項の規定により委任を受け、その事務を執行する。
③ 前項の場合においては、普通地方公共団体の長は、直ちに、その旨を告示しなければならない。

出所:地方自治法、太字は筆者による強調

この第167条の第1項には、ざっと次のようなことが書かれています(市川市に当てはめて、副市長村長を副市長としています)。

  • 副市長は、市長を補佐する
  • 副市長は、市長の命を受け、市の政策と企画を司る
  • 副市長は、市の職員の事務を監督する
  • 副市長は、市長の職務を代理する

今回の、田中市長の入院という事態に際しては、市長の職務を代理することが副市長に求められる大きな仕事ということになりますね。

私としては、市長不在の時に副市長がどのような仕事をしているのかを、是非、広報していただきたいと思います。スポーツで言えば、監督代行のようなものでしょうか。皆、副市長の活躍ぶりを知りたいと思っているはずです(が、把握している市川市民は、市川市の職員を除けば、ほとんどいないのではないでしょうか)。

田中市長、どうかご無理はせず、気になるところはしっかりと検査をしていただき、復帰してからは、忙しすぎるということがないように、働いていただければと思います。

最後に、これは自分自身に言い聞かせるために、という意味合いで、田中小実昌こみまささんの小説に登場する、高木さん(からかい上手ではない)※1という登場人物のセリフを紹介して、本稿を締めくくります。

忙しいってのは罪悪だよ。忙しいと、人に優しくしてやることもできない。

出所:田中小実昌『自動巻き時計の一日』※2

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〈注釈〉

※1:〈高木さん(からかい上手ではない)〉は、『からかい上手の高木さん』を念頭に置いた表現です。『からかい上手の高木さん』は、山本崇一朗さんによる漫画で、テレビや映画でアニメ化され、先日、今泉力哉監督による実写化が発表されました。漫画の作風は、次の通りです。〈中学校の同級生同士である「西片にしかた」と「高木さん」のやりとりを描くラブコメディ。高木さんが西片をからかい、西片は高木さんに仕返しをしようとするが、高木さんに見破られてしまうという2人の関係性を軸に、西片の視点から描かれている。各話を繋ぐ明確なストーリーは無く、西片と高木さんの間のひとつの出来事が一話に収められている。〉(Wikipediaより)

※2:田中小実昌さんの小説『自動巻き時計の一日』は、第66回直木賞(昭和46年/1971年下期)の候補となったことでも知られます。