市川市は、1年後の2024年11月に市制90周年を迎えます。それを見こして、先日発表されたのが、市川市制90周年の記念ロゴです(冒頭の画像、右)。
市川市は、このロゴを今後イヴェントの際などに使うそうですよ。毎日新聞の記事によると、このロゴは、常に新しい可能性に向けて進む意欲や、チャレンジしていく姿勢を表現しているのだそうです。
情報出所:毎日新聞公式Webサイト「市制90周年記念、市川のロゴ作成 『進む意欲』表現 /千葉」(2023年11月12日)https://mainichi.jp/articles/20231112/ddl/k12/010/074000c、2023年11月14日閲覧
市川市動植物園で人気を博しているレッサーパンダ(以下、レッサーP)が向かって左に、流しカワウソなるユニークな出し物(?)で知られるコツメカワウソが向かって右に位置するように、気球に乗っているロゴは、いかにも親しみやすいPOPなものですね。このロゴ、素敵だと思います。ちなみに、コツメカワウソは、「小爪獺」と書き、英語では「oriental small-clawed otter」だそうです。
レッサーPも、カワウソも、かわいいですよね。
でも、ちょっとまってください(ちょっと待って、ちょっと待って、お兄さん!)。気球を見て、何かを思い出しませんか?
私たちは忘れかけていないでしょうか?あるいは、忘れ去っていやしませんでしょうか?
何を?
「市民の昆虫スズムシくん」を。
冒頭の画像の左は、京成線の国府台駅プラットフォームの壁面に掲出された地図に描かれた気球です。改めて、「市民の昆虫スズムシくん」にご登場願いましょう。
最近、カワウソやレッサーPが登場する場面に良く遭遇します。それはそれとして、最近、あまり出番のない「市民の昆虫スズムシくん」にも、たまには活躍してもらっても良いと思いませんか?
え?
「そもそもスズムシが市川市の昆虫だなんて知らないよ」
ですって?
そ、そんな…
ちょっと、これを読んでみてくださいよ!
『広報いちかわ 昭和50年~51年』(市川市役所 1976)昭和51年9月1日号(No.299) p.4には
出所:レファレンス協同データベースより、「市川市の虫がスズムシになった経緯を知りたい。」という質問に対する回答の抜粋(作成:2022年9月1日、登録:2022年12月21日)、https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000326103、2023年11月14日閲覧、改行位置は本文ママ
「市川の豊かな自然に親しみ、自然を愛護する市民のシンボルとして鳥と昆虫を選定します。」として
「市民の鳥・昆虫を募集」の記事が掲載されている。昭和51年11月1日号(No.301)p.4に一般公募の結果、2,310名の応募があり、鳥ではウグイスが584票、昆虫ではスズムシが362票で最も多く、市民の鳥がウグイス、市民の昆虫がスズムシに決定したという記事が掲載されている。
スズムシを選んだ理由は「静かにふけてゆく秋の庭に鳴きつづける声が美しいから」というものが大部分だったとある。
2016年版の「市川市 市政ガイドブック」(21ページ)にも、昭和51年(1976年)の10月に、〈市民の鳥に「ウグイス」、市民の虫に「スズムシ」を決定〉したとの記載がありました。
https://www.city.ichikawa.lg.jp/pr/guide/img/ichikawa-city_guidebook_2016.pdf
スズムシが選ばれた理由として、秋の庭で鳴くその声の美しさが多く挙げられたということです。
最近は自宅に庭がない家も多いですし、スズムシの鳴き声を聞く機会がない人もいるかもしれません。あるいは、秋の虫の音を耳したとしても、それが何の虫の鳴き声なのか――スズムシか、キリギリスなのか、マツムシか、アオマツムシか、あるいはクツワムシか…――判別がつかない人も多いかもしれません。
「秋の虫の音、鑑賞会」があれば、参加したい人は多いのではないでしょうか。
参考までに、虫の音が聴けるYouTube動画(静止画&音声)を紹介します。虫の画像が表示されるので苦手な人はご注意ください。
トヨタ白川郷自然學校YouTubeチャンネル
秋虫の声12選
https://www.youtube.com/watch?v=VpjtTl2KUcA
- マツムシ
- スズムシ
- カンタン
- アオマツムシ
- エンマコオロギ
- ツヅレサセコオロギ
- ミツカドコオロギ
- オカメコオロギ類
- クマコオロギ
- クサヒバリ
- ヤマトヒバリ
- カネタタキ
- ヒガシキリギリス
- ハヤシノウマオイ
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それにしても、市川市は気球が好きなのですかね。市川市の上空に気球が飛んでいるところを見たことはありませんが。
市制90周年記念ロゴの気球は、動物2匹だけで乗っていますね。動物でも操縦できる気球なのかもしれません。一方、スズムシくん気球の方は、人間2人と猫1匹です。カワウソやレッサーPが気球を操縦できるのだとすると、猫もできるかもしれません。しかし、こちらには人間が乗っているので操縦しているのは多分どちらかの人間だと思います。
日本の熱気球パイロットに国家資格はありませんが、日本気球連盟が認定する「熱気球操縦士技能証」という制度があり、このライセンスを取得すれば、ご自身で熱気球を操縦し大空を自由に飛ぶことができます。
PUKAPUKA「熱気球パイロットトレーニングコース」https://www.pukawaku.com/pilottraining、2023年11月14日閲覧
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そういえば、先ほど、レファレンス協同データベースの文章を紹介しましたが、そこに、市民の昆虫と同時に、市民の鳥も募集し、ウグイスが選ばれた、という記述がありました。
かつて(2019年)、市川市のWebサイトには、このような説明が載っていました。
今(2023年11月14日)、改めて市川市のWebサイトで、これと同じ、あるいは、これに類する情報を見ようと思って検索をしてみましたが、それらしき情報には辿りつけませんでした。2019年時点では掲載されていた上の絵は、もう削除されてしまったのでしょうか。
もしかして、スズムシは、スズムシくんは、もう、「市民の昆虫」ではないのでしょうか。
書いていて段々不安になってきました。だんだん気になってきました。DANG DANG 気になる…
声高に叫びたいほどではないけれど、たくさんの人が選んだ市民の昆虫、そして、市民の鳥が、ここのところ、日の目を見ていないことに、切なさを覚える私は、折に触れ、スズムシくん/スズムシさん、ウグイスくん/ウグイスさんを取り上げていきたいと思いました。
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執筆日 2023年11月14日
公開日 2023年11月23日